原匠の願い
私たち原匠は材木屋です。
材木の元になる樹木は、山師達が山の神々に感謝を捧げつつ山に入り、
何世代にもわたって数十年から数百年という長い時間をかけて育ててきた木々たちを伐採したものが、
その形を残したまま私たち材木屋の許へと運び込まれます。
運び込まれた樹木はその姿のままでじっと時を過ごしながら幾年かの自然乾燥を経て、
私たち材木屋の手によって製材機にかけられ材木として生まれ変わります。
製材挽き手は丸太の姿や育った経緯に真剣に向き合います。
木々の魂に手を合わせ木目に逆らうことなくゆっくりと製材機を走らせながら木々の声に耳を澄ませると、
鋸の音根に拠りその木々の生きざまを感じとる事ができます。
「あぁこの子は雷にあったんやな」
「このやんちゃな子は大きな天災に遭遇してるな・・・」
人生半世紀足らずの挽き手は何倍もの木生を歩んできた精霊達に時には喧嘩し、ある時には心打たれ、
その刹那に大自然に生かされていることを思い知らされます。
私たち人間は長きにわたり風雪に耐えてきた木々たちには何一つ逆らうことは出来ません。
ただ畏敬の念を抱くばかり。
丸太から皮が剥がれた木々は、それぞれの角が落とされ製品となり、名工の元へ嫁に出されます。
下駄になり踏まれ続けて滅私奉公する子がいれば、生涯崇め敬われる神仏や寺社仏閣になる子もおり、
様々な次の木生を歩み始めるのです。
私たち原匠諸職工は、日本の木々を生かしどう生まれ変わらせるかを考え続けています。
日々歴史の中から伝統を継承し、模索し、1,000年後のその姿を思い描き、
出会えた皆様方との【ご縁】を心より大切にしながら一緒に創り上げて行きます。
時代の変化に対応し、惑わされず付いて行きながら何かしら毎日
【あれっ?】と考えを巡らせ鋸を挽き、積み上げ、研鑽し、木々を愛し続けます。